日本・変革への展望 -激動する政治情勢を読む-

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1 新自由主義改革の破綻と自民党支配の危機

1950年代以来一貫して、日本の労働者・勤労市民からの搾取と収奪を重ねつつアメリカ帝国主義と日本の独占資本に奉仕してきた自民党による支配体制は、21世紀に入って以降はさらに、市民生活を根底から破壊する新自由主義改革と、露骨な対米追随・海外派兵の拡大、そして平和憲法の明文改悪策動という極右路線を徹底して推進してきた。だが今やその支配は、日本と世界の人民の怒りのかつてない高まりの前に未曾有の危機に立たされている。

そもそも、1990年代初頭における「バブル崩壊」以降の長期にわたる経済停滞の下で、不況と高失業に苦しみ、将来不安に苛まれていた21世紀初頭の日本国民の前に、「古い自民党」の破壊による現状打破というデマゴギーを巧妙なパフォーマンスでふりまき、メディア戦術に長ける右翼ポピュリスト小泉純一郎を首相にかつぎあげることで、自民党は20世紀末に極めて不安定となっていたその支配を再び堅牢なものとすることに成功したかにみえた。だが皮肉にもその小泉政権が加速した新自由主義的「構造改革」が、賃金と雇用の破壊、貧困問題の噴出をもたらし、アメリカの金融危機に端を発する大不況によってそれがますます深刻化する社会経済情勢にあって、かかる事態を打開する道を何ら示すこともできず次々と政権のタライ回しを続ける自民党に対する国民の不満は今や爆発しつつある。各種世論調査が示す、内閣・自民党の支持率が極限まで低下していることにそれは顕著に現れているが、民衆の現状不満のエネルギーを示すものはそれだけにとどまらない。

2008年末から2009年初頭に、首都東京の官庁街の中心部に位置する広場を舞台に、左派労働組合や反貧困活動家を中心とする大規模な失業者運動が展開され、政府は弾圧することもままならず要求受け入れに追い込まれ、さらに全国各地で次々と類似の行動が激発するという空前の事態が現出した。これが「派遣村」として今やあまねく知られる運動であり、まさに、今日の日本の労働者・市民のおかれた状況とそれに対する怒りを象徴する事件と言えよう。

麻生・自公連立政権は、こうした批判的空気に包囲される中での衆議院解散・総選挙へと追い込まれた。そして、自民党ないしは自公連立政権が生み出した今日の危機的な状況に対する不満は、民主党への高い支持率という形をとって現われ、何か予期せぬ劇的な事件による急変でもない限りは、8月末の総選挙後における自民党政権の崩壊はほぼ間違いない情勢にある。

2 民主党の本質と「二大政党」制のもたらすもの

 

 

しかし、次期政権党の座をほぼ手中にしつつあるかに見えるその最大野党民主党は、日本の民衆の直面する困難を解決しうるものなのであろうか。言うまでもなく、「否」である。民主党とはもともと、90年代初頭の自民党・保守勢力内にあって新自由主義改革および国家主義的改革をより急進的に進めることを志向していたグループが、自民党から分裂したグループを軸としていくつかの政治集団を形成し、数回にわたる離合集散を経て、事実上崩壊した日本社会党の右派をも吸収しながら合流して成立した党派である。したがって、労使協調派労働組合を支持基盤のひとつにしているとはいえ、同党は本質的には「小さな政府」を基本理念とする新自由主義的な保守政党であり、さらには国家主義・排外主義的な極右勢力をも内包した勢力であるという点で、自民党とかわるところはない。例えば、総選挙へ向けた民主党の政権公約の最重要項目として掲げられているのが「公務員人件費の削減」であることは、この党の新自由主義的性格を雄弁に物語るものであり、党運営の主導権をじわじわと握りつつある「若手」議員の多くが極右・新自由主義急進派の政治家養成組織である「松下政経塾」出身者で占められていることも、この党の方向性を端的に示している。

このような、労働者・勤労市民にとって危険きわまりない「野党」が、あたかも自民党支配への唯一のオルタナティブであるかのように宣伝され、反自民党の世論を吸収しているのは、ひとえに日米独占資本の広報部たる、読売・朝日・毎日・日本経済をはじめとする大新聞および放送業界(NHK・民放)からなる巨大メディアの世論操作の結果に他ならない。巨大メディアは、たとえ自民党支配が動揺しようとも、アメリカ帝国主義と独占資本による支配を維持し続けるための「安全弁」として、「第二自民党」たる民主党を育成し、「二大政党」の権力のキャッチボールによる「民主的」な形式を凝らした専制を確立するという、日米独占資本の戦略実現へ向けた世論工作部門としての役割を担ってきた。

こうしたメディア戦略に幻惑された国民の支持を獲得して民主党が政権の座につくということは、やはり最重点公約に掲げる「比例代表部分の削減による国会議員数大幅削減」によって単純小選挙区制にさらに一歩近づくこと、それによって共産・社民など少数政党の議会からの事実上の締め出しへとさらに近づくことをも意味する。それはアメリカ帝国主義と独占資本の代理人という点で何ら本質的差異の無い「二大政党」に恒久的な支配をもたらすという意味で、日本の民主主義への死亡宣告に等しい。

今や民主党にすがりついて権力のおこぼれにあずかることにしか延命 策を見出すことのできない社民党はともかく、こうした動向に対して何よりも強く抵抗し、現政権党はもとより民主党に対してより根底的な批判をくわえるべき共産党はいかなる姿勢をとっているのであろうか。こともあろうに「建設的野党」なる路線を唱えて、来るべき民主党政権に対して是々非々の態度で臨むという屈服路線を早々と打ち出しているのである。何よりも、グローバル化の波にのり外資と結託して労働者・農民からの搾取を極大化しつつ資本主義的経済成長を加速させるという戦略をとってきた開発独裁の資本主義国家に他ならない中国に対して、日本共産党が「社会主義をめざす国」という規定を公式に下してはばからないことは、この党が各国に新自由主義的な改革路線による生活破壊を強要する根源であるグローバル資本主義への批判を徹底する視座をもたないことを示している。アメリカ帝国主義と独占資本の代理人たる民主党に対する微温的な姿勢はそのことの表れに他ならない。

3「政権交代」から真の変革へ

このように見たとき、新自由主義改革がもたらした雇用と生活の破壊が生み出した人々の怒りが、自民党による支配の危機をもたらしているとはいえ、その危機が、人々の生活の安定や幸福を真にもたらす政治変動へとつながる可能性については楽観できない情勢にある。とはいえ、雇用情勢をはじめとする今日の経済情勢に対する不満の高まりが、労働運動への注目や関心を再び呼び起こし、さらに金融危機とグローバル資本主義の危機が、新自由主義を超えて資本主義そのものへの懐疑や批判を再活性化しつつあることもまた事実である。若者を中心とするマルクスや『資本論』への関心の高まり、「蟹工船」ブームといった現象がそのことを如実に示している。

今まさに人々の生活や生存を脅かしつつある経済・社会状況を打破し、危機に瀕した従来の支配体制にとってかわるべきものは、資本主義に対する根元的な批判と克服という視座をもった、言いかえれば、社会主義というオルタナティブを明確に掲げる運動であり体制でしかありえない。そのことが多くの人々に共有される条件は、少しずつであろうとも、この国においても確実に形成されつつある

現下の政治危機において自民党政権を打倒し偽りの野党を批判しぬく闘いと、来るべき新政権下においても必ずや生起せざるをえない、賃金と雇用を守る闘争や、憲法と民主主義を守る政治闘争を通じて、その条件をより強固に育ててゆくこと。「政権交代」の先にあるべき本当の変革は、そのような闘争を通じてのみ実現されうるのである。